ご報告 「ものづくり匠の技の祭典2018」三日間の茶会を終えて

今年で三年目となりました
有楽町国際フォーラムでの匠の茶会

「ものづくり匠の技の祭典2018」イベントでの来場者への無料の茶会を三日間、星霜軒がさせていただきました

社中のメンバーに加え、指導先の首都大学東京茶道研究会の部員も参加し、さらに青年部の茶友、流派を越えた野点の仲良しも加わり、賑やかに和気あいあいとリレーしながら奉仕し、三日間で500名以上のお客様にお茶を召し上がっていただくことが叶いました

初年に発表された「匠創庵」、昨年発表された「禅庵」、さらに今年はポップアップ茶室の「瞬庵」を椿邦司氏が御披露目しました

投げるとポップアップで組み上がるテントのフレームに、江戸小紋と藍染の生地を張った、野点や独服にも適した「瞬庵」
敷布はプリーツ加工でシワにならずサラッとした肌触り
畳むと薄型ショルダーバッグの体裁です

鞄の両面は二枚のイグサのマットに早変わり
ファスナー付のマチにあたるベルトをくるりと結んで野の花を生けました
無駄や無理のない、たおやかで自然は心持ちを形にしたような菴ですね

その瞬庵に相応しい、機動力ある軽量野点セットを創ろう!と、星霜軒と後藤裕文氏の共同開発した「日月盆」はすべて紙でできています

クールなターコイズブルーと、フェミニンなピンクマーブルの二色展開が完成しました
蓋裏はそれぞれ銀と金の盆になります

そこに三日月形の半サイズ盆を二枚ずつ、金銀をテレコにセットして、その場の用途に応じて菓子皿や、道具置きなどに使います

うち一枚にはブリキ板が内蔵されているので、茶筅の裏に小さなマグネットを仕込めば、板上の何処に置いても吸い付き、野点時に傾きや風による茶筅の転倒を防げます

長年、野点をしてきましたが、茶筅が倒れて汚れてしまうと、お茶を点てる流れが中断して雰囲気を損ねてしまうのです
その残念さを解消したくて工夫されました

茶碗に入れ子になる薄器も紙製で、円周を四分割してから、再び四分の三のパーツを繋いでできる、丸みある三角形
その名も「御結び形」
茶碗に重ねても倒れにくい平型で、平棗にありがちな茶碗と薄器の間に指が入りにくいことを解消しようと、所作に適した人間工学を考えた優しい設計がオムスビの形になりました
面取りされてスタイリッシュに仕上がりました

茶巾や茶筅は普通サイズを直に組入れますから、消耗品も一般流通しているもののみ

茶碗は敢えて陶器にしました
口当たりやお茶の味わい、茶筅の振りやすさを考えると、茶碗と茶筅は普通が一番!
今回は軽量さとフォルムを優先し、ワサラから生まれたエア陶芸を模した焼き物で合わせました
日月盆にはピッタリの軽さ、形状です

紙は全面に防水ニスが何度も塗り重ねられ、一閑張くらいの手間隙や乾かす時間がかかっていますから丈夫です

外箱が円筒形の本体がそのまま建水になります
内側は三日月盆を支えるバスタブのような立体構造

68度以上を6時間以上保温できる真空構造のサーモ水筒ごと風呂敷で纏めて、一回で運び出し、仕舞った後も荷姿は一個口です

ここで、なぜ風呂敷包みかと言いますと…
日月盆は、実は、禅宗の「応量器(おうりょうき)」から着想してできた入れ子のセットだからです

応量器を使って粗飯を頂く作法のように、最初に開いた風呂敷の端をきれいに折り返し、その上でお茶を点てることで、茶筅や茶巾の落下時にも、ランチョンマット内(つまりセーフ!)となります

この風呂敷の所作が入ることで、自然に、応量器を前にする時のように、五慣の偈を唱える気持ちで謝茶の念が増します
人の心と所作(型)の関係は不思議と、血が通っていて温かいですね

伝統と革新の匠の技による茶室物語から、今年は茶室は小さく、気持ちは広げて、自然へともう一歩踏み込み、宇宙や自分の内面、仏性へと思いを馳せる旅となりました

茶の湯は表現
茶会は物語…

地球と宇宙のあわいにある
両者を隔てつつ、繋ぐ成層圏

伝統と革新のあわい
寂びと遊びのあわい
有形と無形のあわい

匠の技の愚直さに敬服し
物の向こうに見える澄んだ眼差しや笑顔が
いっそう積み重なる茶会でした

関係者各位およびご来場者の皆様に感謝申し上げます
また来年、匠の茶会で集いましょう