ご報告 「武相荘×星霜軒」 その1

「武相荘×星霜軒」 その1

星霜軒の第14回目の月釜は、ご縁あって、白洲次郎&正子さんご夫妻の旧居、現在はミュージアムである「武相荘(ぶあいそう)」にて開催しました。

武蔵と相模の間、から武相荘。
小田急線鶴川駅。
栗平からは丘を越えて鶴川越。
となり村ですから一時間の散歩で着きます。

プリンシプル(次郎さんいわく信条。私たち風にいえば、生き方、暮らし方の流儀。)ある二人の男女。
出会った二つの魂の、取り合わせが奏でる調和と変化。
自然や季節は見飽きることはない。
日々新たに自然体で生きた二人の、息づかいを色濃く残す「かくれ里」。

麹町生まれの正子さん。
麹町暮らしの末に栗平にきた私。
能ヶ谷、栗平、どちらも、都心からのほどよい距離感と、温度差。
それこそが、そのまま平常心の源泉です。

伝えたかったのは場所の持つ空気。
お茶の主原料は、抹茶と湯と、空気なのです。
お茶とお湯を飲んでいるつもりでも、味わっているのも、体内に取り込んでいるも、実は空気、atmosphere、雰囲気、なのです。
本当に含まれているのですから、お茶の味を左右するのは当たり前です。

朝、武相荘に湧く、良質な井戸水を分けていただき、釜で沸かして使いました。
陽の気を産み出す源、炭火は、ガレージカフェの真ん中で人々を憩わせていた、炉の炭火から移して点けました。

武相荘の水と火を使ってのおもてなし。
全ては、武相荘に「在る」ことを損なわずにいたいから。
雨垂れの音、上階から聞こえる靴音、風に舞い込む花びらや葉、場に在るものは、みなみな、しつらいなのです。
道具、趣向はその次…

百名を越える方とご一緒した、ある花の雨の一日。お天気は愛想なしの雨でしたね。
次郎さんがそうされたんだと私は思います。

愛想はなくても、真の姿に愛があれば、人には通じてしまうはず。
人は、愛と自然を受け止めるための器だから。

菓子は「風の二人」
風の男と、韋駄天婦人をお菓子にしました。
赤の深さを出すのに、四色を混ぜ、白との絞り具合も、規則性を持たない1/Fゆらぎが生まれるように、ひとつひとつ中心をかえて絞っていただきました。
中は君餡。親子丼好きだった次郎さんに因んで。
三色で、庭の椿を思い起こしてくれたら、季節も忘れないかも、と…

お茶銘は「プリンシプルの白」

無色と白は、違います。
色が無いのではなく、色を無くしているのだという主張なのか…解釈はお任せいたします。

社中の者にも頼りました。
人は弱くて微力だから、助け合い、信頼が生まれ、寄り添える。
私がいっぱいになると、社中が大きく柔らかくなる。
これも自然の摂理でしょうか。

朝の一席では、母を客に迎える楽しさを味わいました。