星霜抄 ~賢治のリンゴ~

星霜抄
  ~賢治のリンゴ~

リンゴを見つめて
宇宙みたいだなと思う…
宮沢賢治はそんな人

明日世界が終わるとしても
今日私はリンゴの樹を植える
それを偉人という人もいるし
自然だと感じる人もいる

リンゴをいただき
さまざまなことを思う

友人はリンゴの樹を持っている
毎年自分で収穫したこの宝石を
私たちに分けてくださる

私たちはそのリンゴをまた
母や親しい人に分ける
リンゴの数は減るかわり
笑顔の数が増えていく

これを減らないリンゴと
賢治は呼ぶのかも知れない

『資源』と呼ぶと限りがある
でもよく考えてみると
形は消えても
価値は連鎖しつづけている

虚空蔵は無尽蔵…

真っ赤なリンゴの肌に輝く
星雲や流れ星のような紋様を
目で追ううちに
また中心に吸い込まれていく

浮かないことが多い日だった…
体のことや
命のことは
ちょっと反れただけで
ブラックホールのように
日常に突然大きな穴を開ける

真っ赤なリンゴをいただいて
紙袋ごと両腕に抱えて
たくさんの宇宙を覗きこんだら
甘酸っぱい香りで全身を包まれて
立ちくらみするほど
幸せだった

ありがとう
ありがとう
ありがとう