ご報告 第56回星霜軒月釜 「西行の茶会」

第56回星霜軒月釜
「西行の茶会」を終えました

今回は危機一髪…最悪は
初めてオンエア中止になるか
初めてこちらがビデオオフの静止画で登場か
という状況でしたが
お陰さまで無事に終えることができました

実は
前々日に漆に近寄ったらしく
前日未明から二人とも両手がかぶれて痒みに悶絶していました

頼る人もなくなんとか二人で玉手箱を発送完了…
休む間なく映像編集と台本作りと、それらを擦り合わせるパソコン作業

気づけば二人とも
グローブをはめたようなパンパンにむくんだ手になり
夕方からは両足やリンパの流れに添って全身に広がり…

もし当日の朝に顔にも出ていたら
とてもカメラの前に座れないし
お点前ができないかも知れないと

不安と痒みで眠れぬまま当日に
朝イチにはかぶれも絶頂期を迎え
救急で救急外来の紹介を受けたり
そこへ連絡すれども電話は混んで繋がらず…

もう覚悟を決めて
「顔が出せなくなるならその直前まで、道具を持てなくなるならその直前まで、できるところまでやるしかない」と臍を固めて
炭をお越し蹲の水を張り
髪を整え着付けしました

帯を絞められるか不安でしたが
意外なことにむくんだ痒い掌が
絹の着物や帯を触る間は
快感を得ていることに気づきました

そうだ悪いものが入った訳ではない
親しんできた漆なんだから…と
気持ちを楽にしてオンエア開始

吉森が特大のクリームパンみたいな腫れた手で点前するのを常よりやや引き気味の構図で狙いながら
異変がないかハラハラドキドキ…

そのとき
点前している吉森がなんとも幸せの笑顔を浮かべているのに驚愕、、
正座する足は炙られているようにチリチリ焼け
一瞬も静止できないほど痒いのに
カメラの前だからか
景文の山水画の屏風の前だからか
日の光を受けて鈍く光る仁清を目の前にしているからか
いや本当に西行の境地なのか…

とにかく宗教画を見るように
至福の笑みを呆然と眺める私…

昼、夜、二回のオンエア終えて
「痒みに耐えてよく頑張った」
(懐かしい小泉さん風に)
と互いを讃えてあとはバッタリ倒れ込みましたが
いつもの安眠熟睡とは程遠い
業火と悶絶の淵で
互いの様子を監視しながら
ただ「安堵」という濃霧の白い世界の中で十時間漂いました

翌日はさらに漆修行を積み
火曜日になり生活復帰
師匠の稽古場へよろよろ伺い
義理を果たしてまた安堵し
同病相憐れみ一蓮托生の歓びにむせびました

もしかしたらオンエア中に
少し気づかれた方もいらしたかも知れませんが
とにかく吊り橋をわたり終えて振り返る月釜のスライドが
心身に染み渡りました

水曜日になりだいぶ引いてはきましたが
今日の稽古も悶絶を隠す修行

西行茶会の中身に触れられず申し訳ありませんが
事情お汲み取りいただき御寛恕のほどよろしくお願いいたします🙇

「いのちなりけりさよのなかやま」

の和歌のように
苦しみも楽しみも生きている実感です

皆様の期待が私たちの特効薬です
6月の月釜も畏れながら恐れ知らずにまた告知いたしました
二馬力の星霜軒…
いつも目的地は「行けるところまで」です