ご報告 第76回月釜『三好長慶と今井宗久 堺衆の茶』

星霜軒 2023.4.30

第76回月釜『三好長慶と今井宗久 堺衆の茶』
連休中にも関わらず
大勢の皆様にお集まり頂き
ありがとうございます

永禄から元亀そして天正への旅を終え
令和の穏やかな世へ帰って来ました
思い出写真を少し残します

寄付は黒文字茶
LADURÉEの金平糖
今井宗久の自筆短冊 発句
 惜しまれて散らむとや散る花盛
三好長慶や冬康を言っているような
織田信長を言っているような…

宗久の茶を飲み
人生を駆け抜けて行った花盛の人々が
過ります

露地散歩の写真は別であげます
葉山御用邸のある一色海岸を散歩しました

本席は三好長慶の自筆和歌短冊を
この日のために表具しました
いつも熟年から初老に描かれる長慶は
天下統一は三十代で
享年が四十三歳
青年と呼んでよい若さ

父の二十五回忌を南宗寺で盛大に行った後は
松永久秀と瀧山城で千句の連歌会
当時の一流連歌師と花鳥風月三昧だったこと
あまり語られないのは残念です

短冊は長慶が思慕する藤原定家の歌
  ~漣や志賀の花園霞む日に
     あかぬ匂いに浦風ぞ吹く~

大津京にあったとされるユートピア
志賀の花園…
次回の琵琶湖への旅では探し求めたい

三好家の発祥は徳島の傾斜の多い山間部
海の恵みが欲しかったのは道理

訳あって堺が本拠地になったこと
武野紹鷗と今井宗久との出逢い

新しい戦への進化の時に
その潮流に乗ったとも
また飲み込まれたとも…

激しい鳴門の渦潮を超え
瀬戸内海を自由に渡りながら
やがて機内を統一した三好一族の結束は
管領家に尽くしながら貶められた
長慶の父の死が大きな布石だったことを
法要からの一連の連歌三昧が語っている

オンライン茶会の為に探し出した
長慶の歌は実に淡麗で写実
俳人として敬意を覚えた

懐石は鰹のなまり節を季節の素材に
三好家による将軍の御成の献立や
静嘉堂文庫蔵『今井宗久茶の湯書抜』の
記載からアレンジ

菓子は鳴門の渦潮を模した『うずしほ』
三色餡を重ねトルネード包餡する新技法が誕生した

添え菓子は『三好粉引饅頭』
みたまんま、髙麗茶碗の名器
長慶所持の粉引を饅頭にして我が物とした

点前座は大河『麒麟が来る』の
斎藤道三よろしく台子釣釜を
井関先生監修から一歩踏み込んで大板に

みんな手探りだった時代
見よう見まねでも前進あるのみだっただろう
自分を信じる者
自分を欺かぬ者が
自分の為に用意された波に乗り
風を切り雲を突き抜け
光ある方へ羽ばたいた

聚光院は長慶の戒名
光を集め真っ白になった鴎たちに
精一杯生きた慰労と
先達のいる幸せに感謝の献茶をして
二時間半を二回のライブを締めくくった

戦いすんで夜が更けて
星霜軒に再び静けさが戻って来た