星霜抄 歳暮の茶事を終えて


2024.12.30

24日聖夜から始まり29日まで
五日、昼夜十回の茶事を終えました

数え日の一日を星霜軒にお運びくださった茶友、お客様がた…
貴重な時間を茶事にくださることは
『命』を分けて頂いたのと同じこと

ご一緒に過ごし
今年を振り返るひとときは
文字通り人生の果実、至福でした

改めてお茶を伝えてくれた母に
共に道をあゆんでくれる夫に
力や手を貸してくれる弟子や甥に
見守って励ましてくれる友人に
感謝の波が幾重にも寄せてきます

この度は歳暮と聖母をかけて
北政所、ねねの消息を掛けました

ドン・シメオンこと黒田如水や
その妻、光(てる)との交流から
戦国乱世に生き抜いた女性たちを
偲んで趣向といたしました

安南茶碗の底に忍ばせた
イクトゥス(魚)の絵や
何度も何度も呼続して使い続けた
傷と癒しの連続模様は
さながらキリシタンの信仰や
彼ら小さな命の無事を祈る
友人たちの祈りも重なります

人は、人を愛し守ることができるようになるまでに
幾多の自分との戦いを経て来ます

戦いの火種は探さずとも
なんでも業火の元になりえます

同じようにどこででも
何に対してでも
愛を感じ育てることができる筈です

表裏は一体ですから
大事なことは裏返して見る技です
そして穏やかな方を取る習慣です

ねね(おね)は実子はいませんが
多くの人の子を育てました
手塩にかけ愛を注いだ子を
ときに夫や友人に潰されましたが
また人を育てることを止めませんでした

明日世界が滅びるとしても
今日私はリンゴの樹を植える

そして自分自身に引き継がれるまで
太古より一度も途絶えずに
連面と受け継がれて来た
この身体の中にある幾億の命たちを
最後まで守り抜くために
与えられた命の灯火を大切にする

心の御姉様である御寧殿に
歳暮の御茶を献じます

皆様明るく暖かに
よいお年をお迎えください

令和六年の歳暮に
星霜軒 吉森ひかり 拝