星霜抄 ~青森紀行3~


横浜町役場の隣は商工会館
通りをわたるとティファニーカラーの郵便局と赤いポストがある
薬局、クリニック、
人が集まるものはここにこじんまりと集中しているようだ

懐かしそうに歩き
「ここは昔は保育園があった」
「この先にお墓があるはず」
と自信ありげに歩く智浩
記憶は鮮明なよう…

そして記憶の問題は心配に及ばないことが分かった
3分も歩いていない
墓所はすぐに見つかり
ますますお墓があるか緊張が高まる…

「僕の記憶ではここのはず…」
そう言って 指さした先は
墓石が除けられ
黒いシートが貼られた更地

私が一番恐れていたことは
無縁仏となり撤去されることだった

ああ、あと十年早く来ていたら…と
全身に後悔の戦慄が走り泣きそうになる…

「あ、ごめん、こっちだった」
振り返ると一筋違いで
キリスト教徒らしい墓石がある!

暑さと眩しさと緊張と安堵で
自律神経がギュンギュン切り替わり
目眩がした
けれどよかった…

先ほど役場に行く前に
車で通りかかった西福寺と墓所は
裏で繋がっていた
お寺の本堂脇には水桶や柄杓があり
お借りして掃除する

智浩は黙々と水汲を繰り返し
炎天下で二十年分の往復をした
私も顔から汗が滴り素っぴんになり
急速で全身の水分が抜け出ていく…

青いワンピースはオームの血で青く染まったナウシカの衣を思い出すほど濡れて群青になっていた💧

近くに探した野の花を手向け
ようやく手を合わせるときは
頭も心も真っ白な光に満ちていた
「ようやく参りました…」
とても穏やかな気持ちになる

墓に刻まれた文字は
「我は生命なり 甦えりなり」
水に洗われた御影石が鏡のように
智浩と私の顔を写していた

墓碑を見る
ダビデ宅間正義 1975年2月28日
智浩の誕生日は 1975年11月28日
生まれ変わりと言われる訳だ…
祖母は マリア宅間みやこ
二人とも敬虔なクリスチャンだった

西福寺のご住職とお話して
帰りに役場に出向き
墓所は永代と聞き一安心
冷房の効いた役場で
冷たい自販機の水を一気に飲み干し
息を吹き返し私も蘇った

ご先祖様
炎暑の夏も大雪のときも
じっと待っていてくださり
ありがとうございます✨