千絵さんから
誕生日の花束をいただきました
ガーベラ、ダリア、チューリップ、野茨の実
千絵さんが取り合わせを決めたのだと
一種を一輪ずつの花束は
洋花なのに茶花の風情がありました
「 天命と いふをうべなひ 年迎ふ 」
山本 柊花 (しゅうか)
天命を知る五十歳
知ってしまうというだけでは済まされない
それを受け入れ
服従することを思い決めて新年を迎える
敬愛する柊花先生が生前
私にくださった銀色の短冊
俳人の命は消えても
言の葉は残り想いはとどまる
しかるべき時を得て
弾けるように蘇り
読み手の心に飛び込んでくる…
昨夜、稽古の支度をしているとき
右手が選んだたとうを開くと
光を聚めて息づくように
明後日の誕生日への預言が現れた
身を貫いていく北風が吹く今朝
冬陽は低く低く
絹糸より細く細く
目を閉じても金色の針が刺さり
物の色をすべて奪い去って
物の形のみを極めて克明に写し出す
見たこともない世界に降り立った
そんな気になる毎年の既視感と
冷たい新しさが
目鼻耳から
止めようもなく染み込んで
全心洗浄されまっさらに晒される
清水谷に足を踏み入れると
足元に吹き寄せる木の葉の美しさに
ハッ❗と胸を衝かれ
心が体からこぼれ落ちそうになりました
足を止めて見上げる
空の青さと深さ
冬木立の清々しさ
四角く白いビルたちさえ
姿勢よろしく背筋をピンと伸ばして
冬将軍を出迎えています
無事是貴人の本当の意味を考え
義玄の言葉に耳を傾ける
外に求めることをやめ
内なる宝を清めるための
帛紗捌きを繰り返す日
炭火を見つめ
香を聞き
お人の点前に気息を重ね
松風と湯気を糧にして
仏の座に在る自分に気づく
休みなく稽古は続き
人を迎え
人を送る
人は入れ替わり
床の間の花と点前の合間に言葉を交わす
小間に射す光は時計のように回り
小間はすぐ闇となり
晩鐘に包まれ震える
陰影と
稽古で語られた銘のエピソードだけが
今日のできごと
満ち足りた日に合掌