~稽古日記~ 納涼稽古

~稽古日記~ 納涼稽古

納涼稽古を鎌倉で
久しぶりの横横ドライブでした
夏草繁る高速道路
夏雲多奇峰を幾重にも見遥かす
朝比奈インターからの山道は
葛の葉が垂れる

エメラルドグリーンの葉陰を
泳ぐようにハンドルを切る
昨年だけで1万キロ往復した
この道を久しぶりになぞると
かまくら月釜の記憶がよぎる
夏が似合う永遠の湘南boy様が
冷やしておいてくれた部屋

高床で深庇の数寄屋は涼しい…

障子の外は確かに猛暑なのに
不快指数はゼロ
清流を聞き
鳶の声を味わう
ピーヨロロロ…

何が嬉しくての絶唱なのか
私も合わせて叫びたくなる(笑)

露地の水音と蝉時雨をかきまぜ
過去からの記憶と今を混ぜ合わす
障子一枚で暑さを退け
世塵は遠く成層圏の外のことのよう
毎年八月は庭園のある席で
母の社中と合同での
納涼稽古をしてきましたが…

今年は形を変えましたが
夏を体に染み込ませる日を
設けることが叶いました

五名の社中が時差で集いました
支度を軽やかにしようと
茶箱の月を科目にして
二席のうち片方は立礼に…
神前と仏前にお献茶し
精進を誓い
それから別々の部屋に別れて
静かに稽古を…

のはずが
この日はときおり
笑い声の混じる日になりました
障子に一寸の隙間を数ヵ所作り
換気目的とあわせ
露地の緑を目に宿すと自分を
取り巻く世界全体を感じられる…

『先生…いま、わたし、最高に幸せです…』

と低く呟くお弟子さまの目には
外の緑が写っていました

『ええ、わたしも幸せです』
みな暑い中を着物や浴衣で…
さらに自前のご自慢茶箱を持参する
楽しみ上手な方が多く

お点前でひとつ物を取り出すごとに
こちらが身を乗り出してしまう(笑)

一人一人にお招きを受けるような
楽しい会になりました
終わりに清流の庭を散策して

青空
桔梗
朝顔
青竹
清苔
茅葺
石畳

猛暑の夏も
凍てつく冬も
怠らずに手入れされた庭だけが持つ
人に優しい清らかな自然


山鳩
蝉時雨
蜻蛉…

手入れされた庭でも
自然界のお客様もお気に入りで
人はいないときも
さまざまに命が躍動している
たくさんのご出演ありがとう

聞き飽きたかも知れませんが
わたしは書き飽きることはありません

『お茶をやっていて、よかった』
自然とともに生き
文化を養った先達への感謝は…

そのまま真似て生きることで
ご恩返しをいたします
八条宮智仁親王の筆を
甥子の恵観公のもとへ
お連れして床に掛けました

月とのの字にゆかりの場所で
今年の夏もお茶ができました

いまできるお茶を
いつでも気持ちよいお茶を…

日日是好日は私の中にある
出して並べることを怠らずに
生きていくだけ