2021社中稽古始め『初釜』

ギリギリまで実施予定でしたが一都三県に非常事態宣言がなされ
前々日になって東京の感染者が2000人越えのニュースを見た時に
急遽オンライン開催に切り替えました

初釜に先立ち、三日間
垣根や筧を青竹に替えたり
坪庭に敷き松葉を施したり
ガラスの露地脇の垣根を修繕したり…
爆弾低気圧の寒風吹きすさぶ中
身を粉にしてくださった庭の師
指先はシュロ縄結びで荒れ
凍る石に膝を着いて腰もさぞかし
痛んだろうと察します

あまりの有り難さと
青竹の真っ白な切り口の清々しさ
…それを社中の皆さんに見せられないという切なさに
胸が張り裂けそうになりました
(オンラインに切り替えたこと、言えませんでした)

しかし沈んでいる暇はありません
懐石の献立を考えていた本や
出汁をとる為の乾物を片つけて
一気にオンライン準備にチェンジ❗

会記を作成し
挨拶状を印刷し
夜通し宅配伝票を書き
箱を組み立て
金箔酒の小瓶を取り寄せ…
寂しい気持ちを上回るフル回転

箱詰め直前に井上さんが
新鮮な花びら餅と“星天神の絵馬”の干菓子を配達してくださり
寡黙な仕事人の西本君と三人
黙々と箱詰め

まかないのけんちん汁うどんを
美味しそうに食べる西本君を 
アクリル板の向こうに見る…

マスクに手荒い
いちいち器物の消毒をしながら
またひたすら続きの荷造り

最後の伝票を貼った瞬間
佐川急便の集荷が到着

トラックを見送ってから
ようやく一服で人心地

解散してから室礼と撮影
スライドに仕立てて
夜なべのシナリオ原稿書き
掃除用具とパソコンを
交互に持ち替えて
腰痛と肩凝りを交互にいなす

夜は更け
夜は明け
朝日の中で露地を撮影し
花を入れ
床の間に光が差すころにまた…

ここからは普段の通りの茶事です✨
客様がオンラインの向こうという以外は変わらず

炉を作り炭を起こし
釜を掛けて茶を濾し
頭を結い
着物に帯を絞める
帛紗をつけたら
玄関を開ける代わりに
パソコンを開き
招き入れる…

そこからは不思議なほど
例年の初釜と同じ気持ちで時を過ごしました

福引に一工夫が要りましたが
それもまた楽し…
少しの体調不良や家族の都合があった方もかえって無理なく集えました

 嬉しさを何に例えん皆そろい
    あらたまの年の松風の声

画面に写る着物姿とそれぞれの家…
今年はみな、自分の独座すべき庵からの出発になりました

『主人公』
変化のときこそ自分の答えを大切にして暮らしましょう

画面越しに全員の抱負を聞き
私たちも今年のさらなる修練を誓いました
三時間の終わりには
令和二年の初釜をダイジェストにして流しました

『出来立ての碧雲門に私たちは集った……
…世界が変わるほんの少し前の話』

で始まり

『当たり前と、特別は
みている角度が違うだけで
本当は同じかも知れない』

と続くテロップに込めた吉森の想いは自分の言葉かと思うほど…

一人一人の抱負を聞きながら
胸が熱く目頭も熱くなりました

すべてに感謝しています
想像より遥かに
初釜らしい初釜になりました

お陰様です
社中は誇り
ご縁に感謝