星霜抄 2023.4.14   ~ senshin 洗心 ~


東京国際フランス学園 茶道教室
3年ぶりに再開することができました

フランス政府立の日本在住のフランス人および他国の学生が集う学舎
中には日本人の学生さんも居ます

今回は小学3、4、5年生に相当するクラス
日頃、日本語を学んでいます
茶道体験も日本語で実施し
日本語クラスの先生が補助通訳してくださいます

30~40名強のクラスを朝から三回転
大勢での教室移動や靴を脱いで茶室に整列するまでで一仕事
心静かに座って聞けといくら申しましても
心の高揚感は容易に収まりません(笑)

三年生クラスの始まる前は
私たち講師に対して失礼がないかと
先生方が心配を通り越して
警戒してしまうほど!?でした(笑)
(たぶん私たちの心構えの御為と思いますが)

『大人しく座っていられるか心配です』
『では始めに少し座禅しますか?』
『ザ、ザ・ゼンッ!!
 ゼンゼン、無理だと思います~っ💧』
『ふふふ、それでは是非、試させてください。ダメでしたらすぐ諦めてお菓子を出しますから(笑)』

という会話がありました。

授業が始まり、自己紹介してすぐに床の間に掛けた軸、『洗心』の字を見てもらい

『私たちみんな、すっかり手を洗うのが上手くなりましたね。
運動したり遊んだり、勉強しても手は汚れますし、何もしなくても汚れますよね。
心も同じです。
悪いことをしなくても、悲しいことがなくても、洗わなければ段々と汚れが溜まります。
みなさんは、どうやって心を洗いますか?』

✋男子『手を洗う!』
通訳の先生『ちがう、心をどうやって洗うかと聞いてるのよ』
『いえいえ、正解!手を洗いながら、心を洗うんですよね。他には?』

✋男子『音楽を聴く』
『素晴らしい。音楽は心を洗いますね。』

✋女子『シャワーを浴びる!』
『わ~、私もです。お風呂入る度に、心も綺麗さっぱりしますよね!』

✋✋✋…エンドレス
さすがフランス学園(笑)

『すべて正解。
手を洗う度に心を洗ってください。
シャワーの度に心を洗ってください。
音楽を聴く度に心を洗ってください。
お家のお手伝いで、お皿を洗ったら、床を掃除したら、一緒に心を洗ってください。』

『でも、水がない、音楽もない、何もないとき、心が曇ったり、汚れてるなと感じたら、どうします?』

✋男子『抹茶を飲む』
『(笑)私もそうしたい。お茶があれば最高!
でもお茶もコーヒーもワインもなくて、
混んだ電車や、うるさい場所や、心が落ち着かないときはどうしたらいい?』

…ちょっと沈黙。

✋男子『リラックスする』

『そう!何にもないとき、心を落ち着けて頭の中を掃除する簡単なリラックスの方法を一つお伝えします。
背を伸ばして、お臍にキュッと力を入れて、肩はリラックス…鼻からたくさん空気を吸って、一度止めてから、口から細い糸のように息をゆ~っくり吐きます。お腹がへこむまで吐いたら、また鼻からたくさん空気を吸って…』

『す~、ふ~~…』
途端に凪いだ空気が生まれました。

『十まで息を数えてみてください』
私も呼吸に集中します。
茶室の両側は全面窓があり、開放してあり、新鮮な空気をたくさん吸えます。

校庭から聞こえる歓声が、何を言っているかまで、急によく聞こえました。
鳥の囀ずり、車の過ぎる音、町の暮らしの気配…

私たちを取り巻く世界をつぶさに感じると、かえって世界と自分の間に距離を見つけられます。

自分の身体の中に、柔らかい自分の心を匿ってあげる。
身体の中の小部屋では、ゆっくり息を数える”超低速メトロノーム”だけが聞こえる。
心が伸び伸びとそこで休んでいるのを感じる。

『洗心。センシン』
指さしながら軸を読むと皆さん続けてくれます
『セン・シン!』

お母さんを怒らせてしまったとき、友達とケンカした後、くたびれたり、イライラしたとき、これからは自分で心を洗ってみてね。

たった十数回の複式呼吸のあと、たった一度ずつ、お友達とお茶をたてあいました。
『御抹茶は、粉と、お湯と、空気が混ぜてできています。静かできれいな空気を混ぜるために、先ず心を綺麗に洗ってください。』
『コツは耳を澄ませて音を大事に、ぐるぐる回さない、お湯が冷めると泡はたたない』

『美味しかった人』
✋✋✋✋✋✋
ほ。

『上手にたてられたと思う人』
✋✋✋✋✋✋✋✋✋✋✋
美味しかった人より多いってどゆこと?
ポジティブ~(笑)

ちょっと強引な質問をしました
『お茶の先生になれそうな人』
✋✋✋✋✋✋✋
やっぱりフランス学園ポジティブ~👍️

終わってからも、お茶を習いたいとたくさんの生徒さんが言ってくれました。f(^_^;)
(社中では厳しいんですけどいいのかしら)

時間は飛ぶように過ぎ去り、太陽が高くなるころ、怒涛の三時間が終わりました。
静けさが訪れた茶室に放心の六人…。

御差し入れのお握りがなんと美味しいこと。

大好きな『私のフランス学園体験記』でした。
雑念も魂まで吸われて空っぽ、さっぱり…(笑)

帰りの渋滞も、複式呼吸しながら
『セン・シン!』
と呟きながら帰宅。

神棚仏壇に報告の香を焚いて
熱いお茶を飲みました。

じわじわ湧いてきた疲れと
感謝でいっぱいです。