星霜抄 ~令和5年 炉開き~その①

星霜抄
 ~令和5年 炉開き~その①
   2023.11.3~11.5

社中の炉開き
親しい客人も招いて
冬の茶の湯の幕開けです

夏日でしたが
柚子は色づきました

床の間に鳴滝の葉茶壺を据え
大聖寺住持となられた皇女の筆
『わかいほはみやこのたつみしかそすむ…』

花は白い獅子王椿と庭の姫沙羅の照葉
花入は須弥竹の一重切で掛け花

室礼の心持ちを例年とは
少し変えてみました

主役は炉火です
堂々たる炉炭に再会し
嬉しみながら洗い上げると
パチパチと賑やかなお喋りを夜通し聞く

湿し灰を惜しみ無く蒔くと
それだけで幸せです

水を撒いて手懸かりを作り
正装した人人が集い始めると
その笑顔に触発されたように
炭の年輪が赤々と燃え
くろがねの釜も古い歌を吟じました

ああ、これなのだと
半年間忘れていた心の奥の方の何か……
茶の湯の不侶とでも言うか
途方もなく広く深い宇宙に歩みだすような
恐さと諦めと、それをも楽しんでやろうではないかと言うような
清風が吹き抜けます

丹波大納言を二キロ炊き
たいそう余るかという期待は
軽く裏切られましたが

極上のお茶をたっぷりじっくり練って
共に味わうひとときが
なぜこんなにも尊く思うのか不思議です

露地を一部青竹にして
筧の水も湧水の心地に…
塵穴は霜月にもまだ青々した今年の景を

炉縁は真塗から始めて
少しずつ蒔絵や朱を深めるのがよいと聞き
今年は黒から始めました

三日間それぞれ亭主となる者が
工夫して選んだ点前をしました
炉開きのお点前は難関ですのに
拍子抜けするほどに
皆さんよくよく勉強されて来て
私は襖の隙間から心地よく撮影…(笑)

利休型丸卓の朱塗や
宗旦好の青漆爪紅及台子の日もあり
私たちは大道具係よろしくいったり来たり
その間もすぐそこに利休居士の気配もして
夏日の炉開きに汗しました

例年より暑くても寒くても
心の幸せに変わりありません