星霜抄 2024.1.2~  ~初釜はもの作りの神事~

星霜抄 2024.1.2~
  ~初釜はもの作りの神事~

新年は二日から毎日
庭の師匠が青竹や杉や色々積んで来る

今年は枝折戸の柱を銘木!?に替えるという
(年々エスカレートしてないか…)

新しい柱に釘を打ち終えると
山を越えたのか、笑顔になった

四つ目垣の縦を今年も全て入れ替えて
掛樋も新たにすると…💧

私の方は年末になり
細目で柔らかい柳が手に入ったので
新しい柳筒を切ってもらいニコニコ

さらに布袋の竹を探して来てくれて
今年も花入れにしてもらう
デザインのしどころに
吉森は書庫に走り竹花入の図集を開く

竹に線を引くときは
宗旦居士や宗和居士や宗保先生の気配で
『もそっと上かな…うむぅ、よし』
なんて耳元に声がして
古人と一緒に引いている気分だ

藁編みの鶴亀が今年もお出ましだ
『編める人がもう居なくなるから
今年で最後かも』と言いつつ今年も…

だから頂く度に
これを編んでくださる
優しい作者の御長寿を先ず祈る

収穫後の藁は油が少なく編めないらし
この鶴亀の分は
予め刈り取っておくのだという

口に入る米を減らして編んだ鶴と亀に
思いや祈りが織り込まれている…

うちは門松飾りも初釜に向けてする
年末は歳暮の茶事をしたいのと
都合や割り切りばかりでなく
『正月なら暇だから行くよ』と
言ってくださる優しさに甘えている

全て私たちには過ぎたご縁だけれど
『贅沢だなんて思っちゃいけないよ』
また小野澤寬海老師の声が聴こえる

『有難いなぁ、有難いなぁ…』
繰り返し呟くように言う笑顔を思い出す
そう、この有難い奇跡を
見逃さず受け止めて生きたい

枝折戸の四つ目垣には
畏れ多くも仙洞御所の露地を倣い
縦は枝付きの青竹を使う

枝があることで自然な景色を増して
リズムやゆらぎを醸し出す
その分、優しく楽しい印象になる

枝付の竹は風情がありとても美しい反面
運搬時も並べられずに荷が嵩張る!

垣根にする際に扱いにもコツが要って
初めはかなり難儀していたが
今ではスルスル手慣れた風情……

庭を任せ私たちは年賀状を書いて
書いて書いて読んでは書いて
今日、四日からは懐石の仕込みも始まる

学園祭の準備のようなお正月(笑)の毎日
バラバラに働いている三人が
何度も集まってお茶をする
『ああ、うまい』
『本当に美味しい』
茶碗の向こうに満面の笑み
本当に美味しいお茶は
手仕事の後にあるのかも知れない

杉山さんと一緒に台杉を持ってはいポーズ
(めったに写真に写らない人)
この杉の葉がまた艶やかで美しい
手触りが良くて
触っていると浄められるし癒される

紅梅、白梅、臘梅、椿、南天、結び柳…
玄関前は宝の山だ

こちらは宿題を与えられ
どの命も生かさねばと
頭を巡らせる

暮らしは仕事
茶の湯は手仕事に満ちている

伝えなくても伝わる物の声なき声
初釜で感じて欲しい
不立文字の優しい祈りを…