靖子抄 2025.9.9
~重陽 言葉のアルバム~
鮃煮て鮃の味の裏表 靖子
亡父は釣り好きで
釣果を自分で捌き刺身にしたり
煮つけたりしてくれました
昔の母とのデートもボートからは
釣糸を垂れていたとか…
(釣果は「かまぼこもとと」の母)
「鮃は表と裏で味が違うんだ」
それも父の言葉でした
「元さんに授かった一句なのよ」
と母
父は母が卒寿になることは
想像しただろうか…
62歳のままの父は今の母には青年かも知れない(笑)
母に言わせれば
今もその水屋屏風の裏辺りに
父はふざけて隠れているらしい
父が他界して33年が経ちますが
あの日の煮付けの味や
夫婦の会話を閉じ込めた十七文字
父の主張か重陽のギフトか
鮃が自力で羽ばたいたのか
文芸の大海を泳ぎ時を経て
「角川季語別俳句集成 冬」に
収載されました
今日、KADOKAWAから届き
箱を開けば父のどや顔が(笑)
今では婿殿が鰈や鮃魚を煮付けては
稽古日に母に献上している
今日、重陽の日も稽古日です
我心似秋月を掛け
入門したてから四十年選手まで
次々に稽古に見える
鮃の句を味わいながら
孫のお点前で一服
着せ綿のきんとんを南鐐の皿で
こんな重陽も佳いものです
母上さまよ
どうかさらなる長生きをして
まだ誰も見ぬ世界を体感し
酸いも甘いも一句に成して
私たちに伝えてください😊







