「星霜軒一日二碗」其の三

「星霜軒一日二碗」其の三
馬上少年過ぐ。
数年来、茶会とイベントに明け暮れていた五月を、今年は毎日星霜軒で過ごしている。
日々青の色彩を変えてゆく庭の草木と、白く強まる夏の兆し。
去年までは気がついたら変わっていたものたちと、変わってゆく時を共に過ごすことが出来るのが有難い。
イベントがあったから出会えた大切な人も、茶会でしか会えない特別な人もいるけれど、共有すべき自然の美しさと自分が触れていなかったら、茶の湯は空虚なものになってしまう。
一碗の抹茶は、茶と水と空気で出来ている。
薫風が吹く日は薫風が、青嵐の日は青嵐が、朝凪の日は朝凪の空気が入っている。
馬上杯で喫するお茶には、草の花咲く初夏の草原の風の味がするだろうか。
仙台の友から託されたバトンの最後は、仙台の英雄・伊達政宗の詩から、馬上杯で。
「いまとここの一碗」を考える時間を与えてくれたことに感謝しつつ、私たちは優柔不断なため次の一人のお顔を絞ることが出来ず、バトンは一度天に奉納させていただくことにしました。