星霜抄 2023.12.23~大晦日

星霜抄 2023.12.23~大晦日
 ~聖夜の茶事 83回月釜 稽古納め~

歳暮の茶事
今年は聖夜の茶事でさせて頂きました

古渓宗陳の歳暮の消息を
二年ぶりに掛けて過ごした極月が
終る終るといいつつ続き
いよいよ本当に終わります

今年もごく親しい茶友と
数え日を茶事で一緒に過ごすことができ
年末ギリギリまで稽古できて
豊かな気持ちになれました

いつもいつも寄り添ってくださり
ありがとうございます

聖夜の寄付にはキリスト像
ステファノ石田が戦前に描いた絵で
羊がすっかり懐いている姿が愛らしい

星霜軒を描いた絵本
『ふしぎな植物のおはなし』を
作者である正客に読んでいただいたら
またどこかでポンと微かな音がした

夜会では私が読ませて頂きました
みんなみんなに読んで欲しい✨

初座では新しく揃えて出番を待っていた
螺鈿のお椀と折敷を揃えて使うと
『私たちさっきから宇宙にいますよ』
と客人が嬉しい言葉を返してくれた

温かさと優しさと愚直さと
吉森の懐石はいつも吉森そのもの
偉ぶらず丁寧で美しく
悔しいけれど美味しい

私は亭主のくせに
客人と一緒になって
お椀の蓋を開ける瞬間を喜んでいる

炭で沸かした湯を使い
湯気に囲まれゆっくり濃茶を練るのは
自分自身への癒しになる
今年も点前させてもらえた悦びを噛み締める

こうして優しく熱い心の茶友と
今年も過ごさせて頂いた
神仏や先達や古い数奇道具が
いつも私たちによくしてくれる

床の間は古渓の筆と利休作の花入
二人の会話が聞こえて来る…

点前座は宗旦所持の久以の炉縁
洗い縁は一センチも磨り減り低く沈む

茶杓は沢庵宗彭と、もう一会には古織を
茶入の古膳所と取り合わす人物を
一人変えるだけで
その場の会話は全く違うものになる
茶碗は鉄鉢形の楽

昔話する声がひそひそ聞こえる
闇に皆様で連座している気配…
こちらも居るものとして話している
屋根裏には茶屋もいたりする

私が茶事をやりたがるのは
客人にも吉森にも先人にもこうして
もてなされてもいるからなのか…(笑)

修行修行といいながら
甘やかされているのでは
成長は望めそうもないけれど
有難い気持ちでも心は広がる

二回の茶事を二人で終えて
すっからかんに草臥れて
真っ白い感謝の海にキラキラ浮かんで眠る

冬至を無事過ぎて
新しい小さな太陽が生まれたての日
なぜか地球の重力が倍になっていて
起き上がるには別の生き物に進化しないと
無理だったのだけれど…
まかないご飯のまた身体に沁みたこと

茶事をするたび生まれ変わり
人はいつも新しくなる
昨日の自分自身にすがりついても
夢幻の如くなり

稽古納めを二日間して
『歳月人を待たず』を掛けた
最後は学生と語らい
結婚したばかりの若いお弟子に
お祝いの一軸を渡したら…
そこから軸の扱いの稽古になり(笑)

なかなか終わらない
終わらなくていい

 『去年今年貫く棒の如きもの』
        高浜虚子

そう思わない年はない

歳暮の茶事の支度は
そのまま大掃除でもある
一年中、茶事をしていれば家がきれい
慌てず歳末を迎えるだけ

リビングには虚子の娘 星野たつ子の短冊

 『炉火いつもよく燃ゆるゆえ楽しけれ』

闇の仕事は新たな光を生み出すこと
誰の言葉だったかな
夜会で種炭を置くときにいつも思う…

二人きりの大晦日が更けて行きます

明日は新年とやら
またまた新しく生まれ変わります

新しい私たちとも
どうかよろしくお願いいたします
良いお年をお迎えください
初釜もいらしてね😃